9.11から20年
クリスマスの贈り物2001年9月11日、クリスマスの影絵「天使の贈り物」が完成されようとしていた時、深夜のテレビ放送でアメリカ同時多発テロ事件の報道が流れた。
ありえない状況に、何が起こっているのか分からない。知人に連絡をいれたが、通じない。
その翌年は、ニョーヨークで展覧会をする事になっており、父も私も大好きな街であった。
そして翌年ギャラリーでの展覧会オープニングパーティーも無事に終え、翌日私だけ9月11日にボストンへ行き、領事館の方と打合せをした。
その後美術館に行き、会場見学と打合せを終えボストンからニューヨーク行きの飛行機に乗った。
機内は満席となり、間もなく現地に着くはずが、飛行機は中々降りようとしない。
機内の全ての電源が機能しないのか?蒸し暑く不安にかられて、周りの乗客が騒ぎ始めた。
何も放送が無く、不安げに叫ぶ人が増え、周りの乗客は、手を握り始めた。
人種差別無く、互いに手を強く握りあったその時、誰かが歌を歌い、また誰かが叫び始め、恐怖で泣き始めた。
飛行場の上空を何度も旋回しているかの様だった。
怖かったが、父と待ち合わせていた事が気になった。
もしも私に何かあったら、父に何もしてあげられないと思った。
上空を3時間近く飛んでいたら、次第に高度を低下していき、やっと飛行場に着陸した。
だが、また何もアナウンスが無く、再び恐怖に陥った。
2時間ほどが過ぎ、蒸し暑い機内のドアが開いた。
その後、開いた扉へ皆が向かい、タラップから降りた。涙した私は、機内から脱出できた。
タラップを降りた目の前には、ロウソクの光が、目映く広がっていた。
忘れはしない出来事であったが、私にパニック障害を残した。この出来事は、後に私の心に残した、天使の贈り物となった。
9.11の悲しい光の祈りに、天使の贈り物が届きますように。
「天使の贈り物」の原画のバックは、偶然にもクインズの風景に似ている。原画の中にあったプレゼントは、赤いリボンだけになった。
藤城清治美術館那須高原館長 藤城亜季
2021.09.11